蓮が咲き始めると、夏が来たなぁと思う。
去年の7月16日、カメラをぶら下げて、朝の藤原京をぶらぶら歩いた。
あのあたり一帯は、飛鳥から遷都された「藤原京」の跡地。
持統天皇が、律令国家のかたちを整えようとした時代の、いわば壮大な実験場みたいな場所だったらしい。
碁盤の目のように区画された都は、唐の長安にならって設計されたとか。
そんな古代の大プロジェクトの跡地に、いまは蓮がすっくと立って、朝の光を受けている。
11種類ものハナハスが植えられているこの場所では、毎年7月中旬になると花が一斉に咲きはじめる。
空は少し曇っていたけれど、畝傍山を背景に、花たちは淡いピンクのドレスを揺らしていた。
ひとつの花を覗き込むと、蜜を集める蜂たちが、せっせと働いている。
この蓮の中にも、もしかしたら千年前の都の記憶が、少しだけ宿っていたりして……と、そんなことを考えるのは早朝の空気のせいかもしれない。
まだ蕾だった花が、朝日を受けてほんのり開きかけている姿を見つけた。
咲く直前のあの一瞬。あれがいちばん、胸にしみる。
花も人も、咲いている間だけが美しいわけじゃないのだと、最近ようやくわかってきた気がする。
そういえば、蓮の花って朝早く開いて、お昼前には閉じるらしい。
見頃は7月中旬。早起きして行く価値、ありですよ。
古代の都の静けさと、朝の光と、蓮の香り。
すこし眠いままのわたしの頭には、それらがふわっと混ざって、いい感じに酔わせてくれる。