夏祭りの賑わいは、どうにも暑さと人いきれが苦手で、つい遠巻きにしてしまう。けれど、今夜はごく近所から、ドン、と腹に響く音がやってきた。窓を開けると、夜空にぱっと光の花が咲いていた。

花火はもともと、江戸時代の慰霊や厄除けの意味合いから広まったらしい。両国の川開きに打ち上げられた花火は、疫病で亡くなった人々の供養も兼ねていたという。今でこそ「わぁ、きれい」と笑って見上げるけれど、その根っこには、人々の無事を願う祈りが込められている。
近所のこの花火は、二十数分ほどの短い時間だった。それでも、色とりどりの光が暗闇を裂くたびに、なんだか胸が軽くなる。きっと、江戸の人も同じように、しばし日々の苦労を忘れて空を見上げたのだろう。

最後の大玉が、樹木の向こうでぱっと開いた瞬間、あたりの空気まできらきらして見えた。終わってしまえば、またいつもの静かな夜。けれど、ほんの少し、心に火がともった気がする。